冬になると発症するウインターブルーという季節性うつ病。対処法をご紹介

季節性うつ病にも気をつけよう！

「季節うつ病」とは

秋から冬にかけての時期、「季節性うつ病」の発症が増えてきます。もし、最近落ち込むことが多くなったり気分が憂鬱だったり、体はだるう疲れやすくなったと感じたりしたら、この「季節性うつ病」かもしれません。「季節うつ病」は、秋から冬にかけての時期に毎年症状があらわれる病気で、まず周期性にあることが特徴といえます。毎年、10月～11月といった日照時間が短くなる頃に症状が出始め、日差しが長くなる3月頃に症状がおさまるのを繰り返します。「季節性感情障害」(SAD)や「ウインターブルー」(冬季うつ病)とも呼ばれています。この病気は脳機能障害の一種で、倦怠感や気力の低下などの症状が多く見られます。いくら眠っていても睡眠不足だと感じて異常に眠ってしまう「過眠」や、甘い物や炭水化物を食べ過ぎてしまう「過食」などが起きる場合もあり、重症だと日常生活の支障となるような深刻な病気です。

「季節うつ病」の予防法とメカニズム

「季節うつ病」を予防するには、まず午前中の起床で日光を浴び、規則正しい生活習慣をすることが有効だと考えられます。秋など日差しが短くなり始める時期には、通勤時間などを活用してウォーキングをするなど、朝の日光を積極的に浴びるようにすると良いでしょう。人間の体は、日光を浴びることにより、脳から分泌される睡眠ホルモン・メラトニンの原料となる「セロトニン」という物質が作られます。日光を浴びることの少なくセロトニンが不足しがちな冬の時期は、メラトニンが満足に生成されないのです。メラトニンには、概日リズム(サーカディアンリズム)を整える働きがあります。概日リズムとは、季節のリズムや睡眠・覚醒リズム、ホルモン分泌のリズムといったものですが、メラトニン不足によってこれらは変調をきたしやすくってしまいます。

秋から冬にかけての発症が多い理由

季節性うつ病は、なぜ秋から冬の時期に発症しやすくなるのでしょうか。それは、日照時間が減ることで脳内のタンパク質・セロトニン トランスポーター(SERT)の量の急激な変動が要因とされます。これについて、デンマークのコペンハーゲン大学の研究チームでは、SERTにより脳にどのような変化が起きているかを調べるため、季節性うつ病患者11人と健康な23人を対象とした検査「陽電子断層撮影法(PET)」を実施しました。検査の結果、うつ病の兆候があり、特に冬に発症した人については夏に発症した人よりもSERTが5%高いことが分かりました。SERTは、脳内の神経伝達物質・セロトニンを回収することにより神経伝達の調節をしています。SERTが上昇することでセロトニンの量が不足し、うつ病を引き起こしてしまうのです。

季節性うつ病にかかった時の対処法は3つ

それでは、季節性うつ病を緩和するにはどのようにしたら良いのでしょうか。そこで、コペンハーゲン大学のブレンダ マクマホン氏が、3つの対処法を説いています。
まず1つ目は、自宅や仕事場を明るくすることです。季節性うつ病を改善するには、自然の光に積極的に当たることが重要なのです。日が短くなり、それがなかなか困難となる冬には、自宅や仕事場の照明を明るいものに替えることも効果があります。季節性うつ病の治療は、太陽光やそれと同じほどの光を浴びることにより体内時計、生体リズムを整えていく「高照度光療法」が施されることが多く、この方法により効果が見られる患者も多いそうです。
2つ目は、運動を習慣づけることです。冬場は寒いのでできるだけ動きたくないものですが、運動をすることで爽快感が得られたり活動的な気分になれます。さらに、活発な運動をすることで気分を調節する神経伝達物質・ドーパミンが分泌されます。このことにより、気分の落ち込みやイライラの症状を抑えることができます。運動を始めることは、生活リズムを改善する第一歩になり、それを習慣化させることで心身の改善につながります。運動は、日光を浴びながら早歩きをするだけでも効果は実感できます。
3つ目は、「ToDoリスト」を作成し、整理することです。人は、やるべきことが山積みになっていると気分が沈みがちになります。しかし、タスクやプロジェクトが順序良く整理されていれば、落ち込みや憂鬱感が和らぎます。そこで、「ToDoリスト」を作り、実行できそうなものに優先順位をつけていきます。自分に合う生産性を高める方法を見出していくことで、うつ病対策につながります。さらに、自分の目標やタスクをはっきりさせることにより、手の付かないタスクばかり溜まっていく悩みからも開放されるほか、時間を有効に使うことができます。スムーズにタスクからタスクへ移していくことができれば、気分の落ち込みからも開放されていきます。